原稿本

2019年臨時増刊号

化粧への包括的な支援の必要性―作業療法における支援The necessity of comprehensive support for wearing makeup

  • 東京工科大学医療保健学部(Tokyo University of Technology)
  • 石橋仁美(Hitomi Ishibashi)

メイクアップやスキンケアなどの化粧はリラクセーション効果、自尊心の向上や自己の満足感、コミュニケーションの活性化などの効果が示唆されており、女性にとっては生活習慣の1つとして重要な行為といえる。作業療法士は作業を通して健康と幸福な生活の推進にかかわるクライエント中心の健康専門職とされ、その主たる目標は人々が日々の生活の活動に参加できるようになることである。作業療法の対象となるクライエントの化粧状況、支援の現状、化粧品メーカーと共同開発した作業療法の視点からの化粧支援プログラムについて、研究結果を踏まえ紹介している。

ルックス・ケアとしての化粧療法Cosmetic therapy as Looks-care

  • 日本福祉大学福祉社会開発研究所(Nippon Welfare University)
  • 平野隆之(Takayuki Hirano)/大石華法(Kaho Oishi)

ルックスケアとは疾病、傷害、事故などが原因で自分自身のルックス(見た目)に自信を失った人のために、専門分野からのサポートにより、再び自信を取りもどすことを目的としたケアとされている。がん化学療法による脱毛した患者はウィッグなどを使うことで、QOL改善効果が見込まれ、心理的負担の改善や自尊心を取り戻し、社会参加継続につながる。その中で、化粧行為自体も自分らしく生きるための自己実現としての機能を果たす分野であると述べている。

がん治療による見た目の変化へのケアとしてのメイクMakeup as care for changes in appearance due to cancer treatment

  • 東京大学医学部付属病院(University of Tokyo Hospital)
  • 分田貴子(Takako Wakeda)

がん治療では、手術のあとがのこり、脱毛(頭髪、眉毛、まつ毛など)するなどの見た目の変化が起こる。また、肌の色素沈着やシミの増加に悩まされる患者も多い。見た目の変化は想像以上に患者の苦痛となるため、自分らしく生活するための外見ケア・アピアランスケアが重要と考えられる。外見ケアのメイクは治療中であっても心を痛めずに治療前と同じ社会生活を送れるための1つの手段として認識が広まることが期待すると紹介している。

医療現場における美容の有用性と可能性Usefulness and possibility of beauty in medical fields

  • ㈱美・ファイン研究所(Be・Fine Co., Ltd.)
  • 小林照子(Teruko Kobayashi)

医療現場において、化粧ケアの2つの実践、エンゼルメイク(看護師が臨床で行う死化粧)、N+BC(ナーシング+ビューティケア:看護師が臨床で行う美容ケア)がある。エンゼルメイクは亡くなった方に化粧を施すだけでなく、医療行為により失われた生前の面影を取り戻すために造作を整えたりする作業、保清も含まれる。そして、身近な人を亡くした人にとって悲しみから立ち直れるようにそばで支援するグリーフケアにつながる。N+BCは看護に美容ケアの視点やノウハウを取り入れ、看護のさらなる広がりを目指す。顔のクレンジングマッサージは療養の方にとって心理的作用の高いケアとなることなど、看護職の現場において、マッサージ、スキンケア、ナチュラルメイクなどが行われることは、療養中の方のQOL向上、健康寿命を延ばす、家族の心身負担の軽減につながると述べている。

認知症予防と化粧療法Dementia prevention and cosmetic therapy

  • 鳥取大学医学部保健学科生体制御学(Tottori University)
  • 浦上克哉(Katsuya Urakami)

認知症予防には、第1次予防:病気の発症予防、第2次予防:病気の早期発見・早期治療、第3次予防は病気の進行防止までが挙げられるといった予防の定義と実践ポイントについて解説している。また、認知症高齢者にアロマを用いた化粧療法を実施し、対象者の認知機能、生活場面での意欲の向上やQOL、感情や社会性、コミュニケーションの活性が認められた例や要介護者数名に化粧療法を行い、アクティビティケアとして、化粧が日常生活に刺激をもたらし、会話や表情・行動を活発化した例を挙げ、化粧を楽しく行える場の重要性について述べている。

認知症医療の現状と非薬物療法としての化粧・整容療法Current status of medical care for dementia and cosmetic and cosmesis therapy as a non-pharmacological treatment

  • 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター(National Center for Geriatrics and Gerontology)
  • 角 保徳(Yasunori Sumi)

認知症の早期診断・早期治療の必要条件と原因に触れ、薬物療法への限界や抗認知症薬の開発の展望について具体例を挙げ、解説。また認知症の非薬物療法の例として、化粧・整容療法を挙げ、口腔機能と認知機能への相関関係があることから、口腔外マッサージの重要性に触れ、筋拘縮効果や、口腔周囲のマッサージがQOL向上につながるとしていている。また、心理面への好影響、運動機能の維持・向上・社会性の回復、老人性抑うつ予防、オーラルフレイル(身体的、精神的、心理的社会的にも支障をきたしやすい状態)、QOLの維持、向上の効果がされると説明している。

化粧の医学的検証―外見の装いから身体的な健康へValidation of cosmetology from the medical viewpoint

  • 常盤薬品工業㈱(TOKIWA Pharmaceutical Co.,Ltd.)
  • 松中 浩(Hiroshi Matsunaka)

メイク、化粧、スキンケアという言葉が示す範疇は、人によりとらえた方が違うが、内面の自分を解放し楽しく健康に過ごすための化粧を実践することも望まれている。アトピー性皮膚炎の患者への適切な洗浄、保湿指導は皮膚生理機能の改善、皮膚の赤みを低減し、明度を高めることにより、健康な皮膚色をもたらし、患者のQOL向上となる。また、ざ瘡患者へのスキンケア・メイク指導は、医師の指導の下では、治療効果に悪影響を及ぼすことなく、患者のQOLに有効であることを確認し、また、メイクではベースメイクにはざ瘡皮疹が目立たないようにする効果、ポイントメイクにはざ瘡皮疹のある頬部から目、口元などといったほかの部位へ相手の視線を誘導する効果を示したと説明している。

化粧と医療、化粧によるQOL向上、最新研究などに関する論文をピックアップし、その内容を紹介しています。
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We introduce papers on the improvement of QOL by makeup, medical care and makeup.
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